世界の自浄作用について

これまで明るみに出ていなかった、立場がある人の悪行がSNSや某雑誌でどんどんリークされている。これまでは様々な圧力や、告発する事によるリスクとリターンのバランスが取れなかったため闇に葬られていた数々の所業が。裁判官でなくとも、警察官でなくとも、どんな人でも他人を裁くことができる世界が現実のものとなっている。

 

良いことではないか。悪事がどんどん裁かれるのであれば、それがたとえ私刑であってもさ。SNSが世界の自浄作用を強化したのさ。そういう見方もある。

 

しかしこれらのニュースに反応している人のうち、どれほどの割合が被害者に寄り添い、同じ事が繰り返されないために行動を起こしているだろうか、と考えてしまうこともある。所詮は有名人の悪行を責め立てて、酒の肴にするだけの話であれば、やはり自分自身もっとやるべきことに、社会をより良くするための行動に時間を使いましょうよ、という話になってしまうであろうし。

 

犯罪であれば警察の出番なのであるが、この世の中には犯罪ではないが、無辜の人間に大きなダメージを与えるグレーな行いというものが無数に存在する。それを裁けるのは裁判官ではなく、一般市民であり、その中でSNSや某メディアでの告発が相次いでいる背景もあろう。

 

ここで問題になるのは、「何が真実なのか?」がわからない段階でも、世論としての被疑者に対する評価がおおむね決まってしまうような場合であろう。犯罪であれば裁判で最終的には、一定レベルの基準が担保された判決が下されるのに対して、上述のグレーな行いというものは、そもそも法的な罪無罪の基準は存在しない。シンプルに話題性だけで食いついている多くの人間は、自分の好きなように事件と被疑者に対する評価を下し、そこには被疑者の人生を破壊することになる可能性が常に存在する。

 

怖い話である。

 

一人の自立した人間として自分ができるのは、倫理観を高く持ち続けること。いつどこで誰に見られても恥ずかしくない言動を心がけることであろう。人生で数多く失敗もしてきているが、今からできるのは、少なくとも。